リアルの残像、それは禁断の媚薬
「年越しからの4日間、リアルパートナーとスィートで過ごします。」
年の瀬、彼女はオレにそう教えてくれた。
仮想世界だけの付き合いなのだから、インワールドに居ない間のことは詮索すべきではないのだろう。
だが、そんなに簡単に割り切れるものではない。
必要以上にマイナスで後ろ向きな想像、妄想をして、自ら進んで凹んでしまうのが人間だ。
少なくともオレがそうであることを彼女は痛いほどに知っている。
だからこそ「ここまでのことは現実にします」と宣告してくれたのだろう。
そうか、その4日間だけ妄想しないことを決意すればいいだけの話だ、と割り切れた。
とさらっと言えるのなら、さぞカッコいいだろうし、苦労もしない。
その4日間、彼女がどんな過ごし方をするのか・・・
相思相愛の理想的と思われるカップルが二人きりで過ごす4日間
プライベートでは一糸纏わぬ姿で過ごす彼女
その理由を知っているオレとしては妄想に歯止めが利かない
優しくも残酷な宣告には続きがあった。
悪いニュースの後の良いニュースという感じだ。
「年を越す前にそうたさんとしたいことがあります。」
聞き返さなくても、それが何かを察したオレはすぐさま自宅にテレポートした。
それが取り残されるインワールドパートナーへの哀れみに基づくものかなどと気にすることもなく。
彼女が「したい」と言うのなら、それは言葉通り、額面通り「したい」のだと思えるくらいは彼女を理解している。
わずか50分程の時間だったが、「お望みのままに」という彼女の言葉に甘えて、アバター姿の彼女を貪った。
萎える間が無く、6回果てた。
リアルセックスでも経験の無い回数、生身の女性を前にしない自慰行為では尚更考えられない回数。
何より一向に萎えないことに驚いた。
彼女のリアクション、リクエスト、発する言葉一つ一つがオレを悦楽へと誘う。
知的で優しさに満ち、そして何よりも妖艶なコミュニケーションの虜になった。
終始体が熱かった。
ダブルビジョンとでも言うのだろうか。
事故によるものを含め、オレはテレカンで彼女の姿と声に二度触れている。
その時のインパクトは正直消せるものではなく今でもしっかり焼き付いている。
アバターの容姿には彼女の姿が
チャットの言葉には彼女の声が
オーバーラップしてしまう(オーバーライドと言うべきか)
極上の女を二人同時に抱いているような錯覚に陥った。
「1回目」の最中、「忘れる」という約束を守れずにいる現状を叱られる覚悟で白状した。
「リアルでの接触を求めないことは確約してもらったけど、見たもの聞いたものを忘れてとは頼んでいません」との回答。
「でも、オレの意識としては半分リアルの美夕さんを抱いてる気になってしまいますけどいいんですか?」と尋ねた。
「それがあなたの快楽を加速させる媚薬になるのなら、私は歓迎さえします」と彼女。
この一言でオレの中の遠慮や後ろめたさが消しとんだ。
賢者の時間が割り込んで来る間が無く放精を重ねたオレは少しの間落ちていたのかもしれない。
オレのレスが無い彼女からの3、4回の呼び掛けに続く
「素敵な時間をありがとう。良いお年を!風邪ひかないでね (^ε^)-☆Chu!!」
というメッセージを彼女がログオフした数分後に目にした。
「遠隔同期的自慰行為」
彼女がそう定義するインワールドでの「エッチ」
たかみつさんが「彼女のアバターに無いもの」で仰っているもの・・・
それは強烈な、否、もしかしたら、禁断の媚薬なのかもしれない。
今年は、その強烈な常習性の発症を抑え込むのに一苦労しそうだ・・・汗